『いいよ…助けてあげる。とびっきり、気持ち良くして、快楽から解放してあげる』
今すぐそいつから、
『んっ…』
ーーー離れるんだッ…!
そんな俺の心の声が、桜に届くはずはない。
頭の中が、真っ白になった。
…キス…?
確かに、リップ音と、桜の甘い声が耳に入った。
そして、電波障害が起きたのか、盗聴器の接続がプツンと切れた。
「…ッ、ふざけるなッ…!!」
ノートパソコンを、車の床に叩きつけた。
あの男…許さない、許さない許さない許さないッ…
「桜ッ……桜子ッ…」
頼むから、無事で居てくれッ…。
桜の家に向かう間、もう俺は本当に、生きた心地がしなかった。

