嫌な予感ばかりが脳内を侵食して行く。


咄嗟に、パソコンに繋いである盗聴器をノートパソコンに移す為、PC同士を繋いだ。

すぐに同期が完了し、ノーパソを持って部屋を出る。



『桜子?どこか具合が悪いのか?』



男の問いかけに、桜はなかなか返事をしようとしない。

桜…?どうした?何か言ってッ…。



『お、にい、ちゃんっ…』



ーーーまずい。

ヘッドホン越しに聞こえてきた、普段の桜とは違う、色香の溢れた声。


この男、桜に何かしたな。



「車を出してくれ!!今すぐに出る…!!」



待機していた運転手に、半ば怒鳴るように叫んだ。

急いで車に乗り込んで、盗聴を続けたまま車が発進した。



「至急、桜子の家に向かって。飛ばしてもいいから、本当に急いでくれ」