【side 牙玖】








桜に盗聴器を付けたのは、桜が『距離を置きたい』なんて悍ましいことを言い出した次の日から。

今まではGPSで我慢していたけど、もうこれ以上は限界だった。

桜の日常全てを見ていたい。

行動全てを知りたい。






今日はあいつと帰ると言って、帰って行った桜。

連日重なる苛立ちで、大人気ない態度をとってしまった。


せっかく、放課後桜とケーキを食べに行こうと思っていたのに…

一体いつまで、こんな生活が続くんだ。

登下校の時間は、桜を独り占めできる1日で最も至福のひと時だったというのに…。


ーーああ、耐えられない。


爆発してしまいそうな怒りを抑え、父さんから頼まれていた仕事を片していた。

ひと段落ついて、ふぅ…と息を吐く。


こんなことをしている間にも、桜はあの男と一緒にいる。

そう思うだけで、嫉妬で狂いそうだ。