不謹慎にもほどがあるとわかっていながら、がっ君に触ってほしくて、この熱をどうにかしてほしくてたまらなかった。
「たす、けて…がっ君…っ」
わたしから出た情けない声に、がっ君の動きが止まった。
お兄ちゃんの胸ぐらを掴む手を離し、壊れ物を扱うかのように、わたしを抱きしめてくれるがっ君。
その手は、先ほど人を殴っていたものとは思えないほど、優しかった。
がっ君、がっ君っ…。
怖かった…がっ君が助けに来てくれて、ほんとによかった…っ。
愛しい人の胸の中は、どうしてこんなにも安心するんだろう。
「…桜、抱っこするよ。俺の首に腕回して」
言われた通りに、自分の腕を回した。
わたしを抱えて、立ち上がるがっ君。
「…ッ、さくら、こ…」
お兄ちゃん…?
まだ意識があったのか、お兄ちゃんの姿を確認しようとしたけれど、がっ君によって阻まれる。
わたしの視界を防ぐように顔を胸に押し付けて来て、そのまま、がっ君はお兄ちゃんを蹴り飛ばしたんだろう。
痛々しい音が響いて、思わず目をキツく瞑った。
「……お前、覚えておけよ。…死ぬ以上の恐怖、味わわせてやるからな…」
がっ君は、恐ろしい声でそう言って、お兄ちゃんのいる部屋からわたしを連れ出してくれた。

