【完】君は狂った王子様。Ⅱ



不謹慎にもほどがあるとわかっていながら、がっ君に触ってほしくて、この熱をどうにかしてほしくてたまらなかった。




「たす、けて…がっ君…っ」




わたしから出た情けない声に、がっ君の動きが止まった。

お兄ちゃんの胸ぐらを掴む手を離し、壊れ物を扱うかのように、わたしを抱きしめてくれるがっ君。

その手は、先ほど人を殴っていたものとは思えないほど、優しかった。


がっ君、がっ君っ…。


怖かった…がっ君が助けに来てくれて、ほんとによかった…っ。


愛しい人の胸の中は、どうしてこんなにも安心するんだろう。



「…桜、抱っこするよ。俺の首に腕回して」



言われた通りに、自分の腕を回した。

わたしを抱えて、立ち上がるがっ君。



「…ッ、さくら、こ…」



お兄ちゃん…?

まだ意識があったのか、お兄ちゃんの姿を確認しようとしたけれど、がっ君によって阻まれる。

わたしの視界を防ぐように顔を胸に押し付けて来て、そのまま、がっ君はお兄ちゃんを蹴り飛ばしたんだろう。

痛々しい音が響いて、思わず目をキツく瞑った。



「……お前、覚えておけよ。…死ぬ以上の恐怖、味わわせてやるからな…」



がっ君は、恐ろしい声でそう言って、お兄ちゃんのいる部屋からわたしを連れ出してくれた。