「ごめんね、こんなことして…でも、やっぱり良い兄でなんていられない。お前が他の男のものになるなんて…耐えられない。俺はお前が欲しいんだ…愛してるんだよ桜子」
お兄ちゃんの唇から紡がれる愛の言葉は、苦し気に震えていた。
まるで、わたしが愛しいと叫ぶような眼差しに耐えきれなくなって、目を逸らす。
そん、なの…
ーーおかしいよっ…。
「お兄ちゃっ、離し、てっ…」
「離すわけないだろ。…ほら、舌出して?」
やめて、やめて…助け、てっ…
「がっ、君…っ!」
まるで、今にも消えそうな、喉の奥から振り絞ったようなわたしの声が、聞こえたかのように。
下の階から、何かが壊れるような騒々しい物音がした。

