ケーキが焼けた合図に、オーブンが特有の音を鳴らした。

ミトンをはめて、蓋を開くと、中からコーヒーの芳ばしい香りと、甘い香りが、ちょうど良い具合に交わって私の鼻孔を通った。



「うん…ちゃんと膨らんでる…!」



久しぶりだから不安だったけど、ちゃんと出来たみたい。

オーブンから出して、冷ますため瓶に挿し込んでひっくり返した。

さっ、お兄ちゃんを呼んで、ティータイムにしよう。

わたしはコーヒーは苦手だから、お兄ちゃんが買ってきてくれたプリンを食べようっ…!


一時間前に夕ご飯を食べたばかりだけど、スイーツは別腹。

お兄ちゃんの部屋の扉をノックし、扉を開けた。



「お兄ちゃん、ケーキ出来ーー」



…ん?

なに、この変な臭い…。


なんだかいろんな香水が混じったような異様な薫りがして、顔を顰める。