騒がしい中、その単語が飛び交っていて、わたしの耳にも入った。


特に気にはならなかったけど、あまりに女の子たちが一点へと熱い視線を送っていたので、ちらりと横目で見た。


…あれ?


正門の前で、立っている一人の男性。

離れているからはっきりとは見えないけれど、どこか見覚えのある面影だった。



「……桜、今日は裏門から出ようか?」

「え?どうして?」



反対側にある裏門から出るなんて、遠回りだよ…?

常に効率を気にするがっ君が、そんなことを言い出すなんて、珍しい。


別にわたしはそうしてもいいのだけれど…。



「行こう。こっち」



強く手を引かれて、歩いていた道とは真逆の方へと連れられた。