「桜子も、母さんも父さんも、みんな騙されてるんだ。あいつは絶対に、頭のネジが何本も抜けたイかれた人間に決まってる」

「お兄ちゃん!!」



自分でも、驚くほどの大きな声。

普段滅多に気を荒げない方なので、机をバンっ!と叩きながら立ち上がったわたしに、三人の視線が集まった。


お兄ちゃんも、目を見開いて、瞬きも忘れた様子でこちらを見ている。


酷い…っ。

視界が、溢れ出したもので滲んだ。



「がっ君のこと何にも知らないくせに…悪口なんて言わないでっ…!」



わたしは、ごちそうさまも言わずに席を外して、リビングから飛び出した。



「桜子!」



わたしの名を呼ぶお兄ちゃんの声を無視して、鞄を持ち家を飛び出る。