うん、気のせいに決まってる…。 「ほんとうか?……そうは、見えないけどな」 「え?何か言った?」 「ううん。何もないよ。おやすみ」 「うん。おやすみなさい」 わたしは、先ほどのお兄ちゃんの表情を頭の中から掻き消すようにキツく瞼を閉じ、眠りについた。 意識を手放す直前に、 「ーーー愛してるよ…俺の桜子」 …そんな囁きが聞こえたのは、きっと幻聴に違いない。