あー、胸糞悪い。

何が兄貴だ、ふざけるな。


一番厄介な男が帰って来たことにより、俺の安息が侵される。


一体いつまで日本に入り浸る気だ。

研究で忙しかったはず…日本に帰ってくる余裕なんてないだろう。

もしかして…桜に会うため?


その可能性も無きにしも非ずで、なんて諦めの悪い男だと頭が痛くなった。


あいつが桜を見る目は、兄の親愛ではない。


もともと、あいつは白咲家の養子だ。
桜子との血の繋がりは無いし、俺よりも後に桜に出会った男。


桜の家は、由緒ある名家だ。

財は然程無いものの、伝統と名はする人ぞ知る一族。


その名を絶やすことなく受け継いできた白咲家。桜は、白咲家の一人娘だったため、婿養子を貰うつもりだったらしい。