自分のいる方とは反対の方向を指して、そう言った桜。
一体どうしてそんなことを言い出すのだろうかと思いながらも、桜のお願いを断れるはずもなく、言われるがままそちらを向いた。
すると、首にかけていたタオルが外されて、髪を拭かれる。
「桜?……何してるの?」
「……えっと、がっ君の髪……拭いてあげたいと思ってっ……」
……。
……なんだよ、その可愛い言い方。
いつも俺が髪を拭いてあげてるから、お返ししようと思ったの?
まさか……桜に髪を拭いてもらえるなんて……
桜にされると、こんなことでも幸せでたまらない。
桜が俺にしてくれようと思う全てが、愛しくてどうにかなりそうだ。
「い、痛くない?」
「うん。気持ちいいよ」
ぎこちない拭き方が、可愛すぎて心臓が痛いほど。

