「桜、お待たせ」
ジャージから私服に着替えたがっ君が戻ってきて、ベンチから立ち上がる。
「ううん!お疲れ様!」
「ありがとう。……さ、じゃあ行こうか?」
がっ君は笑顔でわたしの手をとって、歩き出した。
結局、とーるとは話せなかったなぁ……。
けど、とーるの名前出した時、がっ君が悲しそうな顔をしたから……がっ君に悲しい想いをさせるくらいなら、話せなくてもいいや。
わたしのせいでいろいろと大変なことに見舞われただろうことは、心の中で深く謝っておこう……。
女の子と話さないと言ってくれた日から、がっ君が女の子と話している姿を一度たりとも見ていない。
それなのに、わたしが他の男の子と話すのは……ズルいよね。
この時のわたしは、もうがっ君の独占欲に麻痺されていたのか、お互い以外の異性との関わりを絶つことに対してなんの疑問も持っていなかった。