バカな桜……
何のためにこの試合を引き受けて、何のために……桜の目の前であいつを一蹴したと思ってるの……?
「……あいつと、何を話すの?」
「何をって……」
「どうしても、話さなきゃいけないことでもあるの?」
声に苦を加えて、耳元で囁くように言った。
桜が、少し弱みを見せた俺に弱いことを、知っているから。
「……ううんっ、やっぱりいいやっ。ごめんなさい」
ほら……ちょっと俺が塩らしくしたら、桜は強く出れないもんね?
そんな騙されやすいところも、可愛くてたまらない。
「それじゃあ、すぐに着替えてくるから、ここで待ってて?この後は二人の時間にしよう」
「うんっ……!」
邪魔者の後始末も、終わったことだし……。
もう、あいつも桜に近づこうだなんて考えは無くなっただろう。
難波はもう白になったとして……後は、お兄さんの始末に徹しなきゃ。
桜をベンチに残して、体育館を出た。
【side 牙玖】-END-