【完】君は狂った王子様。Ⅱ




見物者の視線が、京極さんに集まる。



「ははっ……ねぇ、笑わせないでよ」



京極さんは、優しく、良い人でーー……

……いや、違う。


本当に良い人は、こんな顔しない。


人の、こんな狂気に満ちた顔を、僕は生まれて初めて見た。



「……俺が、冗談言ってるように見える?」



難波君が、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえるほどの静寂。



「……さ、早くしないと試合の時間になりますね、行きましょうか椎崎さん」

「………あっ、は、はい!!!」



な、なんだ……

い、今のは一体なんだったんだ……。


まるで何事も無かったかのように、いつもの笑顔を浮かべて歩き始める京極さん。

僕は流されるように頷いて、体育館へ向かう京極さんの後を追った。