見物者の視線が、京極さんに集まる。
「ははっ……ねぇ、笑わせないでよ」
京極さんは、優しく、良い人でーー……
……いや、違う。
本当に良い人は、こんな顔しない。
人の、こんな狂気に満ちた顔を、僕は生まれて初めて見た。
「……俺が、冗談言ってるように見える?」
難波君が、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえるほどの静寂。
「……さ、早くしないと試合の時間になりますね、行きましょうか椎崎さん」
「………あっ、は、はい!!!」
な、なんだ……
い、今のは一体なんだったんだ……。
まるで何事も無かったかのように、いつもの笑顔を浮かべて歩き始める京極さん。
僕は流されるように頷いて、体育館へ向かう京極さんの後を追った。

