【完】君は狂った王子様。Ⅱ





「…………桜を、賭けようって言うの?」



聞いたこともないような低い声が、確かに京極さんの口から出た。

たった一言なのに、僕はなんだかとても恐ろしくて、その場で体が硬直してしまう。


京極、さん?



「勝つ自信あるなら、余裕やろ?」

「なるほど……それじゃあ、僕が勝ったらお前死んでね」

「……は?」



何言ってるんだと言わんばかりに、顔を顰める難波君。

京極さんが、死んで、って、言った……。


僕が知る京極さんは、そんな言葉は吐かない。

それなのに、目の前にいる京極さんは、笑顔で物騒な言葉を並べていた。



「桜を賭けようって言ってるんだよね?なら、そのくらいの対価は必要だろ」

「……お前、冗談キツいわ」



辺りが、シンと静まる。

後から更衣室を出てきた同チームの部員も、何事かと二人を見物していた。