「…………桜を、賭けようって言うの?」
聞いたこともないような低い声が、確かに京極さんの口から出た。
たった一言なのに、僕はなんだかとても恐ろしくて、その場で体が硬直してしまう。
京極、さん?
「勝つ自信あるなら、余裕やろ?」
「なるほど……それじゃあ、僕が勝ったらお前死んでね」
「……は?」
何言ってるんだと言わんばかりに、顔を顰める難波君。
京極さんが、死んで、って、言った……。
僕が知る京極さんは、そんな言葉は吐かない。
それなのに、目の前にいる京極さんは、笑顔で物騒な言葉を並べていた。
「桜を賭けようって言ってるんだよね?なら、そのくらいの対価は必要だろ」
「……お前、冗談キツいわ」
辺りが、シンと静まる。
後から更衣室を出てきた同チームの部員も、何事かと二人を見物していた。

