案の定、難波君の睨みは鋭精を増した。
あああっ……今すぐこの場から逃げ出したい……。
僕、部外者なのにっ……!
明らかに、僕の好きな平穏とは程遠い状況。
「や、やめようよ難波君っ……!何があったか知らないけど、暴力はダメだよ……!」
「……チッ」
流石に仲裁に入った僕に、難波君は納得いかない様子で京極さんから手を離した。
「今日、お前のこと絶対負かしたるわ……!そのプライド、ズッタズタにしたる……!」
「うん。楽しみにしてる」
「くそっ……。……そや、そない自信あるなら賭けようや」
何か閃いたように、突然声色を変えた難波君。
「俺が勝ったら、桜子くれへん?」
ーーいったい、どう表現すればいいのだろう。
難波君の、その一言。
それが、この場の空気を一変させた。

