【side 椎崎】
僕がキャプテンをしている理由は、一番目立たないから、だ。
……ああ、それと、暇だからっていうのもある。
なんにせよ、キャプテンになったからには、京学バスケ部を引っ張っていきたいと思っている。
今日、京極さんが助っ人に来てくれてよかったぁ……インハイ前のこの時期に、練習試合とはいえ黒星を付けるのは避けたかった。
京極さんが来てくれたら、いくら早乙女相手とはいえ負ける可能性はほぼ無に近いだろう。
ーー試合が始まるまでは、そう思っていた。
「京極さん、今日は本当に来てくれてありがとう!」
試合前の更衣室。
いつも物腰柔らかい彼にそう伝えると、いつものように柔かな笑みを返してくれた。
「いえ。力になれるかわかりませんが」
「そんな謙遜は止してよ〜!期待してます!」
本当に、彼は紳士な人だ。

