【完】君は狂った王子様。Ⅱ




「桜、お待たせ」

「がっ君、あのね……」

「桜子」



ピタリ。

わたしの身体が、動くことを止めた。


とーるのことを聞こうと思ったのに、がっ君の声が、瞳が、わたしを呪縛するかの様に、一切の動作を禁じられた気がした。

わたしから目を離さないがっ君は、ゆっくりと、口元を緩める。



「ケーキ、美味しかったよ。ありがとう。試合頑張るから……俺のことだけ見ててね」



きっと、がっ君は全部お見通しなんだ。

とーるがいることも、わたしがとーると話してもいいかと聞こうとしたことも……全部。

ーー少しだけ、身震いした。


遠回しに、『許さない』と言われた気が、して。



わたしに許されたのは、ただひとつ。