「桜、お待たせ」
「がっ君、あのね……」
「桜子」
ピタリ。
わたしの身体が、動くことを止めた。
とーるのことを聞こうと思ったのに、がっ君の声が、瞳が、わたしを呪縛するかの様に、一切の動作を禁じられた気がした。
わたしから目を離さないがっ君は、ゆっくりと、口元を緩める。
「ケーキ、美味しかったよ。ありがとう。試合頑張るから……俺のことだけ見ててね」
きっと、がっ君は全部お見通しなんだ。
とーるがいることも、わたしがとーると話してもいいかと聞こうとしたことも……全部。
ーー少しだけ、身震いした。
遠回しに、『許さない』と言われた気が、して。
わたしに許されたのは、ただひとつ。

