そんなわたしを見兼ねたがっ君が間に入ってくれて、お兄ちゃんは少し腕の力を緩めた。



「………ああ、お前いたのか」



先ほどの、わたしの名を呼ぶ声とは似ても似つかない低く重い声。

刺々しさを隠そうともしない声色に、わたしは苦笑いすることしか出来なかった。



わたしを抱きしめるこの男性は、3つ年の離れたわたしのお兄ちゃん。

今年大学生になったお兄ちゃんは、オーストラリアの大学に入学した。


卒業するまでは帰ってこないって…言ってたのに…



「久しぶりだな、桜子。…また綺麗になったか?」



優しい笑顔でそんな冗談を言うお兄ちゃんに、頰をぷくっと膨らませる。