「ううん、なにもないよ。桜の私物と制服は使用人に届けてもらったから、問題ないよ」
独り言のような声が聞こえた気がするけど……って、嘘!
「ほら、向こうに置いてあるだろう?」と指を指された方を見ると、そこにはわたしの私物が置かれてあった。
いつの間に……、それより、お母さんとお父さん家にいないのに、入れたの?
お兄ちゃんが、開けてくれたのかな……。
なんにせよ、助かった……。
「ありがとうがっ君」
正直、今はお兄ちゃんに会いたくなかったから……。
安心して、もう一度、今度はしがみつくようにがっ君に抱きついた。
わたしに優しく触れる手が、頭を撫でてくれる。

