「それじゃあ、支度を済ませて、学校へ向かおうか?」

「あっ……わたし、制服と鞄取りに帰らなきゃっ……」



すっかり忘れていた……一文無しに出てきたから、学校のものなんて持ってきていなかった。

一度帰らないと、と思った時、昨日の出来事を思い出す。



『愛してるよ、桜子』



お兄ちゃんのその言葉が脳裏を過って、ゾッとした。



「桜……顔色が良くないけど、大丈夫?」



がっ君の声にはっとして、急いで笑顔を作ってみせる。



「……え?だ、大丈夫っ、元気だよ!」



ただでさえ心配をかけたのに、これ以上心配させたくない。

あんなことがあったけど……今までは、優しいお兄ちゃんだったんだ……

話合えば、きっとわかってくれる……大丈夫、きっとまだ、わたしたちは仲の良い兄妹に戻れる……っ。