あれから一年。

 もう一度、沢良木春馬に告白されたが、なんとなく頷けないまま、迎えた晩秋。

 紬は新しいマスコットに挑戦していた。

 同じフェルトのマスコットだが、あの布で縫い合わせた奴ではなく、ふわふわの羊毛フェルトをニードルという針で刺して、形を整えて作るマスコットだ。

 こっちの方が上手くできそうな気がする、と思いながら作っていたのだが、なかなか上手くいかない。

 勉強机にノートだけ広げ、そこで、ぷすぷす羊毛フェルトにニードルを刺しながら、可愛いハムスターを作っていた。

 ……なんかホラーな出来だ、と左右もおかしければ、表情も妙な感じに仕上がったハムスターを掌に載せて眺める。

 うーむ。
 此処をもうちょっとこう、とニードルを刺そうとしたとき、いきなり不思議な顔のハムスターがイケメン声でしゃべり出した。

「此処に優れた人形師がいると聞く……

 うっ」

 高らかに話し出した次の瞬間、ニードルが刺さっていた。

「も、もう懲りてくださいよ、王子……」
と紬は苦笑いしながら、困っている―― ように見えるハムスターを両手にのせて、目の高さまで持ち上げた。

 王子の入ったハムスターは、不思議な表情をしたまま固まっていたが。

 紬の目には、少し照れたように笑って見えた。




                          完