「普通に男の人に触れられたみたいでビックリしました」

 なんだかなにも考えらず、淡々とそう言うと、
「だから言ったろう。
 私は普通に男の人だ」

 そう言ったあとで、いつも自信満々の王子は――

 いや、人形の変わらない表情のせいで、そう見えていただけなのかもしれないが、ちょっと不安そうに訊いてきた。

「どうだ?
 私はお前の世界でもイケメンか?

 ……何故、笑う、紬」

 その怖々と訊く様子に、紬は、まだ王子のぬくもりが残っている気がする人形を握りしめ、笑ってしまった。

 笑った弾みに、何故かちょっと泣きそうになりながら紬は言う。

「いいえ。
 あまりにも絵に描いたような王子様だったので、笑っちゃっただけです……」
と。