「眠そうだな、紬」
と次の日、みなの戦闘の訓練を見ていた紬は、王子に言われた。

「昨日も言ったであろう。
 休んでおれ」

「ありがとうございます。
 休みの日に寝だめしているので、大丈夫と言えば大丈夫なんですが」
と言ってはみたが、王子は笑ったまま、心配そうにこちらを見ていた。

 あまり心配かけても悪いので、その日から空いている時間は王子のテントで寝ているようにしたら、ずいぶん身体も楽になってきた。

 可愛い兵士たちが、ちまちま動くのが見られないのが、ちょっとつまらないが、と思っていると、テントの外から話し声が聞こえてきた。

 どうやら、次の対戦相手からの使者と兵士の一人が話しているらしい。

「最近、お前のところの人形師を見ないな」

 うむ、と重々しく頷いた兵士は、
「我々の予備のパーツもずいぶんストックができたので。
 紬様は、今度は王子の(ねや)にこもって、王子のお子を身ごもるために頑張っていらっしゃるのだ」
と言い出した。

 頑張ってなーい! と思っていると、
「ほう、そうか。
 稀代の人形師が王子のお子をな。

 無事、世継ぎが産まれたら、祝いを贈らねばな」
 などと敵の使者は言っている。