「玲奈、俺さ、学校祭でライブやるんだ」

徹が嬉しそうに教えてくれる。

「ライブって、軽音部で?」

徹は高校に入学してから、軽音部に入り、ギターを始めた。

「そ。玲奈も絶対観に来いよ」

徹は少し屈んで、私の顔を覗き込むように言った。

「うん。でも、どんな曲やるの?」

徹が教えてくれたのは、彼のお気に入りのロックバンドの有名なナンバー2曲。

徹に勧められた影響で私も大好きになった曲だ。

「うわっ、それは楽しみ。でも、徹、弾けるの?」

バイオリンなら余裕で弾けるだろうけど、なんと言っても徹はギターを始めて、まだ3ヶ月しか経ってない。

「まぁ、バイオリンほどは弾けないけど、それでも1年生で1番うまいって言われてるんだぞ」

「そうなの?」

まぁ、音楽経験のない人よりは、上達は早そうだけど……

「玲奈ももうすぐコンクールだろ?
 仕上がりは順調?」

そう、2週間後にはバイオリンのコンクールがある。

「まぁ、こればっかりはやってみないと分かんないから。徹も出ればいいのに」

小学生の頃はいつも一緒に出てたのに、徹は中学生になってから、コンクールに出なくなった。

「俺は、バイオリンで食べていきたいわけじゃないから」

それでも、レッスンをやめないってことは、バイオリンが好きなのは変わらないのかな。

私たちは、他愛もない話をしながら登校し、別々の教室へと入る。

そして、ほぼしゃべることのない1日が過ぎていく。