堪え切れずに、嗚咽を漏らし始めた僕の頭
を、弓月がそっと抱いた。
 涙で濡れた頬を、彼女の胸に押し付ける。
 ふわ、と、優しい香りが「心」の柔らかな
部分を刺激して、余計に涙が溢れてしまった。



-----今日は、最悪だ。



 大好きな人に、醜態をさらして、
 かっこ悪いところばかり見せて。
 本当に、最悪だ。

 そう思うのに、溢れてしまう涙を止められ
ないまま鼻を啜った僕に、彼女は言った。

 「ほんとうに、可笑しな人」

 それは、温かな毛布で包むような、ふわ、と
胸が軽くなるような、とてもやさしい声だった。