Diary ~あなたに会いたい~

 「前の男が義兄で……死んでる、って?」

 そう、永倉恭介が呟いた時だった。

 テーブルの隅でずっと沈黙を守っていた父親
が口を開いた。

 「実は私……早くに妻を亡くしてまして。
それで、あの子が17歳の時に、再婚したんです。
 お互い連れ子だったものですから……弓月に
2つ年上の義兄ができました。これがその、弓弦(ゆづる)
です」

 父親が財布の中から一枚の写真を取り出した。

 少し離れた席から差し出されたそれを、永倉
恭介が受け取る。僕は隣から彼の手元を覗き込ん
で、そうして、絶句した。



-----似ている。



 というより、あまりに似すぎていた。

 背中の半ばまである長い髪を風に揺らしながら
幸せそうに微笑む弓月の、その肩を抱きながら
目を細めている青年。

 二人の、学生時代の写真だと言われて、信じな
い人がどこにいるだろう?

 強いて言えば、弓月の義兄、弓弦の口元には
ホクロがあり、地毛なのか染めているのか、
永倉恭介よりも髪の色素が薄く見える。

 「驚いたな。本当に。そっくりだ」

 永倉恭介が複雑な顔をしながら写真をまじまじ
と眺めた。僕も頷く。頷いて、ずきりと胸が痛ん
だが、その理由はわからない。

 「それで、俺がこのお義兄さんに似ていること
が、どうしてフラッシュバックの引き金になるん
です?彼との間に何かあったんですか?」

 永倉恭介が顔を上げて小林医師と父親の両方
を見る。父親はまた苦し気に項垂れてしまった
ので、変わりに小林医師が、実は、と低い声で
言った。

 「ちょっと申し上げにくいのですが……彼と
その母親、弓月さんにとっては義理のお母さん
にあたりますか。その2人の死が、彼女のDIDに
深く関係しているのです」

 「弓月のお義母さんも、亡くなっているんで
すか?いったいどうして……」

 僕は顔を顰めた。

 父の再婚でできた新たな家族が2人とも、死んで
いるというのだ。
 
 しかも、弓月は義兄と恋仲だった。
 何となく不自然で……嫌な予感がする。