「お二人のショックは十分わかります。簡単に
信じるのは難しいでしょう。何しろ、解離性同一
性障害(DID)という病は、本来の人格から交代
人格に切り替わると、性格や名前はもちろん、
記憶や筆跡、性別さえも変わってしまいます。
先ほどの日記を見てもわかるように、弓月さんと
ゆづるさんの筆跡はまったく別人のものです。
彼女の場合は、利き腕も変わってしまう。
その上、容姿までも違ってしまえば、周囲の人
にはまったく別の人間に見えてしまうでしょう」
小林医師が日記を手にパラパラとめくる。
そして開いた日記を僕たちの方に向け、文字を
指でなぞった。
「弓月さんは右利きですね?」
僕は首を縦に振った。
「では、ゆづるさんの利き腕は?」
永倉恭介が顎に手をあてて考える。
「確か……左利きです」
「よくご存じだ」
小林医師は満足そうに頷いた。
「では、そろそろ本題に入りましょう。先ほ
ど、弓月さんが意識を失って倒れた原因ですが、
私はフラッシュバックを起こしたせいだと思っ
ています」
「フラッシュバック……」
永倉恭介が反芻する。
僕はテレビで聞いたことがある言葉だと思いな
がら、黙って小林医師の話を聞いた。
「過去の辛い体験や記憶が、ある刺激によって
突然蘇ってしまうという、あれです。DIDの患者
は発生頻度が高いと言われていますが、弓月さん
の場合、“あなた”に会ってしまったことが、
フラッシュバックの引き金になってしまったわけ
です」
小林医師の眼差しが永倉恭介、その人に向けら
れる。彼は思い当たる節があるのか、もしかし
て、と口を開いた。
「それは俺が、ゆづ…弓月さんの前の男に似て
いることが原因、ということですか?」
「その通りです。あなたは、弓月さんの………
亡くなったお義兄さんに、驚くほどよく似てい
る」
再び、室内が静まり返った。
おそらく、僕だけでなく、永倉恭介の思考も
追い付かなかったのだろう。
目を見開いて言葉を失くしている。
何しろ、今の話を整理すると、永倉恭介が弓月
のかつての恋人に酷似していて、その恋人は、
亡くなった弓月の義兄だと、いうのだ。
もはや、何に驚けばいいのかわからない。
信じるのは難しいでしょう。何しろ、解離性同一
性障害(DID)という病は、本来の人格から交代
人格に切り替わると、性格や名前はもちろん、
記憶や筆跡、性別さえも変わってしまいます。
先ほどの日記を見てもわかるように、弓月さんと
ゆづるさんの筆跡はまったく別人のものです。
彼女の場合は、利き腕も変わってしまう。
その上、容姿までも違ってしまえば、周囲の人
にはまったく別の人間に見えてしまうでしょう」
小林医師が日記を手にパラパラとめくる。
そして開いた日記を僕たちの方に向け、文字を
指でなぞった。
「弓月さんは右利きですね?」
僕は首を縦に振った。
「では、ゆづるさんの利き腕は?」
永倉恭介が顎に手をあてて考える。
「確か……左利きです」
「よくご存じだ」
小林医師は満足そうに頷いた。
「では、そろそろ本題に入りましょう。先ほ
ど、弓月さんが意識を失って倒れた原因ですが、
私はフラッシュバックを起こしたせいだと思っ
ています」
「フラッシュバック……」
永倉恭介が反芻する。
僕はテレビで聞いたことがある言葉だと思いな
がら、黙って小林医師の話を聞いた。
「過去の辛い体験や記憶が、ある刺激によって
突然蘇ってしまうという、あれです。DIDの患者
は発生頻度が高いと言われていますが、弓月さん
の場合、“あなた”に会ってしまったことが、
フラッシュバックの引き金になってしまったわけ
です」
小林医師の眼差しが永倉恭介、その人に向けら
れる。彼は思い当たる節があるのか、もしかし
て、と口を開いた。
「それは俺が、ゆづ…弓月さんの前の男に似て
いることが原因、ということですか?」
「その通りです。あなたは、弓月さんの………
亡くなったお義兄さんに、驚くほどよく似てい
る」
再び、室内が静まり返った。
おそらく、僕だけでなく、永倉恭介の思考も
追い付かなかったのだろう。
目を見開いて言葉を失くしている。
何しろ、今の話を整理すると、永倉恭介が弓月
のかつての恋人に酷似していて、その恋人は、
亡くなった弓月の義兄だと、いうのだ。
もはや、何に驚けばいいのかわからない。



