以来、俺は夜が更けて寝静まる頃にメリルの部屋を頻繁に訪れるようになった。

 普段は閉まっている二人を隔てるドアも、その時だけは開けられる。
 部屋で俺を待つメリルが拒否する事はない。

 メリルが望んだのだから。 もちろん俺だって、そうだ。
 ただ、心は別にある。

 メリルがメリルでなければ。
 俺の婚約者がアイリス嬢だったなら……。
 何度そう思いながら抱いただろうか。


☆ ☆ ☆


 シャツの前をはだけさせたまま、バルコニーに出てみる。
 汗ばんだ肌に当たる風が心地良い。
 こんな夜更けでも月明かりの下なら燭台の蝋燭も点ける必要がないだろう。
 俺は扉をそのままにカーテンも開けて、月明かりの中で寝た。

 ここにいない人を想いながら。
 夢でも構わない、彼女がバルコニーから現れてくれたらという願いを込めて。