執事のアルトに俺とカークスのコートと帽子を渡し、部屋へと向かった。

 アルトのおかげで室内は温かい。
 俺達が戻る前から暖炉に火を灯してくれていたようだ。

「アルト、もう遅いから休んでいいよ」

「承知致しました、お休みなさいませ」

 今日は外がいつもより冷えていたから、パチパチと燃え踊るそれが俺の身体の奥を擽る。
 俺の冷えた心だけは外に残したまま。

「アイリスは向こうの部屋にいるよ」

 二人連れ立って俯き加減に向かう。
 部屋の前まで来ると、そこで立ち止まってカークスを振り返る。

「さぁ、カークス。このドアの先で待つのは未知の世界だ」

 一緒に行こう、地獄へと。