アイリスはメリルの枕元に立つ夢を見たらしい。
 そして気付けば、寝ているメリルに向かって私に返して、と言っていたというのだ。

 カークスを私に返して、と。

 どうやらメリルの魔術で、カークスへの想いを覗かれたらしい。
 アイリスはメリルの寝ている真上から見下ろすだけでなく、今にもその彼女の首を締めようとしていた。
 メリルは絞められながら、アイリスを見て笑ったというのだ。
 そしてそんな自分を楽しそうに眺める自分もいたのだと。
 とても恐ろしく、このままでは操られて本当に何かしてしまうのではないかと思ったそうだ。
 メリルからカークスを取り戻さなければ、自分と同じ目に合うのではないかと危惧したという。


『なぁ、カークス。 アイリスの事が好きか?』

 ジョルジュの言う事を確かめなくては……。 ヒューゴや魔術協会についても。

 メリルは死神なんかじゃない。
 純粋な想いを持つ、一人の子爵令嬢だ。
 ただの勘違いに決まっている。
 或いはメリルに悪意を持つ人間の……。

『どうなんだ、アイリスを好きか?』

『そんな事、今はどうだっていい』

『俺にとっては大事なんだよ』

『好き……だ』

『アイリスが言ったんだ。 一度だけ過ちを許して欲しい、と』

『おい、まさか……』

『カークス、アイリスを愛してやってくれないか』

『ジョルジュ、冗談だろ。 本気……か?』

『俺はアイリスを愛してる、彼女の婚約者はこれからも俺だ。 でもカークスへの想いが邪魔するのなら遂げさせてやりたい』