『なんとも不愉快な話だな』

『女が魔術を使う時、必ず満月の夜らしい』

『え……?』

『事実、あの日は満月だった』

『あ……』

『俺さ、思うんだよ。 女はヒューゴの為に魔術を使ったわけじゃない。 本当は絶望させたかったんだ』

『でもダビデならわかるが、ヒューゴが絶望するか?』

『結果的には似たようなものだろ』

『ヒューゴが当時、魔術協会の会員だという報告は一切なかったぞ』

『それはそうさ。 ヒューゴはその時にはまだ会員じゃなかった』

 もしもジョルジュの言う通りだとしたら、ヒューゴは今でも操られている可能性がある。
 それは魔術師に? それとも女に? メリットはどこにある?

『ヒューゴは確かに侯爵家の馬鹿息子だった。 でも、平気で女を襲えるほど愚かではなかったはずだ』

『それはそうだが』

『あの件についての後始末はカークス、お前がつけたはずだろ?』

『あの時は一言告げただけだ』

『何て言ったんだ?』

『お前の侯爵家を潰されたくなければ消えろ。 そう言っただけだ』

『それが王族の一員の言葉かよ……』

『その魔術がどうかしたのか?』

『うん……』

 ジョルジュはそこから途端に口振りが重くなった。 言いずらいような、そんな感じだ。