夜が更ける前にヘンダーソン伯爵邸を後にした。

 書斎でのジョルジュはまるで思い詰めた雰囲気で、それは伯爵の件が心配なせいもあっただろう。
 でも、それだけではない。
 彼はアイリスを心から愛している。
 だからこそ、あんな事を言ったのだ。

 そして俺とジョルジュは、これからアイリスの元へ向かう。

 本当にこれでいいのか、とは思わない。
 アイリスが願ったからそうするのだ。
 いや、違う。 そんなのは言い訳だ。

 俺を求めているのだとジョルジュが懇願したからだけではない。
 彼女の想いを一緒に受け止めて欲しいと言われた時、身体が喜びに震えたのだ。
 俺にはジョルジュのそんな愛し方が眩しい。

『ジョルジュ。 今日、俺を呼んだのはこの為だったのか?』

『それもあるし、それだけでもない』


☆ ☆ ☆


 それは書斎での会話がキッカケだったのか、それとも最初からそのつもりだったのか……。

 ただ、それがなくても俺はアイリスを目の前にしたら、そうせずにはいられなかっただろう。

 俺に待つ未来が絶望なのだとしても。

 それが裏切りだとわかっていても。