『悪いな、カークス。 わざわざ来てもらって』

『気にするな、ジョルジュ。 ヘンダーソン伯爵には昔から可愛がってもらったからな』

 俺の屋敷から馬車で走れば数日は掛かる。
 でも、少しでも早く着きたくて、馬車を降りて鉄道で向かった。

 夕暮れ色に染まるジョルジュの屋敷は、緑豊かで心地良い風が吹く場所にある。
 ここはヘンダーソン伯爵家の別邸で、俺も幼い頃は何度か遊びに来た事がある。
 今はジョルジュの屋敷となっていて、もうすぐ夫婦となるアイリスもここに住んでいる。
 ジョルジュの父親、ヘンダーソン伯爵邸はここから緑深く、小高い丘を挟んだ先だ。

 俺は迎えの馬車を降りて、ジョルジュの屋敷の玄関前で二人の出迎えを受けた。

『伯爵のご様子は?』

『心臓だよ、元々が発作持ちだったから無理は出来なかったんだけどね。 覚悟が必要な時が来たのかもしれない』

『伯爵はまだまだ大丈夫さ』

『カークス様』

 ジョルジュの隣で静かに立つのは婚約者のアイリスだ。