『メリルには想い人がいるよ』

『そのような事は……』

『いつも彼と一緒にいて楽しそうに笑う。 俺といる時にはあんな風に笑ったりしないからな』

『気安くお話が出来るだけなのでしょう』

『何故かな、メリルといると苦しくなるんだよ。 メリルが他の男と楽しそうに話す姿を見ると、目を背けたくなる』

『カークス様、それは……』

『でもさ、アイリス嬢はそんな俺と嬉しそうに話すんだ。 メリルが他の男と楽しそうに話す時のように』

 あぁ、想いがすれ違う二人を見るのはなんと歯痒いものなのだろう。
 言って差し上げたい。

『それこそがメリル様への想いなのですよ』

 カークス様が呟いた事がある。

『アイリス嬢はジョルジュより俺といる時の方が楽しそうだ』

 寄宿学校でのひととき、ジョルジュ卿とアイリス嬢の三人でお茶を飲む時もそうだったと言う。
 男というのはなんと愚かな生き物なのだろうか。 ジョルジュ卿が気付いていないはずないのに。