『ジョージはメリルが可愛いのだな』

『恐れ多い事ですが、私と亡き妻との間には子供がおりませんでしたので』

『そうだったな』

 カークス様がメリル様を大事に思っているのはわかっている。
 昔から自分を懸命に追い掛けるメリル様が可愛くて、顔を綻ばせる事はよくあった。
 メリル様が追い付けなくて少しでも離れてしまうと、その場で立ち止まって振り返り、手を取ったり。
 カークス様が寄宿学校へと行ってしまった時もそうだ。
 そこで一緒に過ごせる時間はほんのわずかなのに、それでもその姿が可愛くて健気だと微笑まれたり。

 平民のダビデに対するメリル様の想いは恋というより、私に言わせれば自分が持つ事の無い羨みのようなものだったのではないかと思う。
 カークス様しか知らないメリル様はそれが恋だと勘違いしたのだろう。
 そうでなければ、ダビデが結婚した時も子を授かったとわかった時も本当に嬉しそうに喜んだりしない。