カークス様の馬車を送り出した後、ジョージの提案通りに応接間でお茶の最中だ。

 今朝届いたジョルジュ卿からの文とは別に、ダビデからも文が届いていた。
 それによると、ある貴族邸で御者として重宝されているという。
 実はダビデは騎士ではなく、御者になったのだ。

「ジョージのおかげよ。 貴方の口添えがなかったらダビデは職を失って暮らしに困るところだった」

「ダビデさんは真面目な方のようですから」

 その貴族邸にはジョージと昔から顔馴染みの執事がいる。

 寄宿学校を卒業後、彼は騎士を諦めた。
 というより、目指すべき未来が変わったのだ。 かねてより恋していた、あの女性を伴侶に。

 その貴族邸の敷地の隅に住まいを借りて間もなくの頃、二人の間に小さな命が宿ったという。
 彼女の親も幸いにして体調を戻し、今ではその貴族邸で共に下働きをするほどだ。

 ダビデは平民ながらも従卒で、本気で騎士になろうとしていた。
 それでも簡単に違う未来を選べるほどの熱意と愛情が二人の間にはあったのだ。