アイリス様とジョルジュ卿も、私達同様に子供の頃に婚約している。
 なのにカークス様とアイリス様の様子を見ていると、どちらが本当の婚約者なのかわからなくなる。

 どこに本音が隠れているのかすら。

 その後、侯爵子息はカークス様の何かしらの助言もあり、寄宿学校を去った。

 どんな話し合いが行われたのか私にはわからないし、ダビデ達にも知らされなかった。
 その後、侯爵家でどんな話になったのかも何もわからない。

 ただ、あの彼女も寄宿学校を去る事になったのには驚きを隠せない。
 その理由が侯爵子息とは違うと知ったのは、彼女の親が病気で倒れたらしいとカークス様からの報告で知らされたからだ。
 彼女は親の看護の為に学校をやめるしかなくなった。

 その時のダビデの様子は言葉にするのも辛い。
 ダビデは彼女への想いを心に秘めたまま、その後も学び続けた。
 そして何度も文の交換を続けながら、想いを打ち明けたのだ。
 ダビデは騎士になって彼女を守ると私に誓った。

 その強い意志の眼差しを見て、私はカークス様への想いにも気付いたのだ。
 同時にカークス様とアイリス様の想いにも。