下僕扱いを受けていたのは、ダビデだ。
 彼は私と同じ年齢で、騎士希望だという。

 いくら貴族と平民が一緒に学べるとはいえ、身分差はどうしても逆らえない。 悔しそうに下唇を噛みながら下僕扱いを甘んじて受けていた。

 彼は学びに対して真面目で、一生懸命。
 そして平民だからと屈折した感情を持つ事なく、騎士になる為ならこれも試練だと言って笑って耐えていたのだ。

 そんなダビデの姿に感銘を受けた私は言った。

『凄いわね、ダビデは』

『メリル様だって、わざわざ学ぶ必要もないくらいの知識をたくさん持っていらっしゃるではないですか』

 それ以来、意気投合して共に学び合う関係に発展。
 次第に彼に恋心を意識するようになるのは、自然な事だった。

 そんな時、ある事件が起きてしまう。

 場所は貴族専用の書斎。
 その部屋の中から声が聞こえて来たのだ。
 それはあまりに叫びにも似て、助けを求める悲鳴のようにも聞こえた。

 近くを通り掛かった私とダビデが急いでその場に駆け付けると、有り得ない有り様がそこで広がっていた。