ところが少しずつ身体が変化していく内に感情も変化し、カークス様に見つめられると何故か心臓がドキドキした。

 いつだったか昔、言った事がある。

『ねぇ、カークス様。 何故かしら、心臓が痛いの』

『どうした? どこか悪いなら医師に見てもらうが』

 当時の私はそれがカークスへの想いなどとは全く気付いていなかったし、彼も私に対してそんな感情を持っていなかったのは知っていた。

『カークス様の瞳に吸い込まれそうで。 それを見つめているとドキドキしてしまうのです』

『では、あまりメリルの瞳を見ない方がいいか?』

『それは嫌です。 カークス様は私を見ていて下さい』

『メリルの、俺を捕らえる瞳が大好きだよ』

 わずか十歳の少女が、それが恋人同士が紡ぐ愛の言葉などとは思いもかけずに。

 彼も私をその相手とは考えていなかっただろう。