ジョルジュ卿とアイリス様の婚姻が本来の予定よりかなり早くなったのは、アイリス様の希望によるところが大きかったという。

 ヘンダーソン伯爵がベッドから起き上がり、どうにか日常生活を送るまでに回復した病状も要因の一つだろう。
 そして何事もなく無事に式を終え、二人は夫婦となった。

 婚姻を早めた理由に、もしかしたらアイリス様の中で予感があったのかもしれないと私は想像している。 後々、噂の火種が起きたとしても、すぐに消せるように。

 婚姻の儀に一人で参列したカークス様は、どんな想いで二人を見つめていたのだろうか。
 隣にいるはずの私がいないカークス様を、二人はどんな風に見ていたのだろうか。

 文の中にアイリス様への想いや感情は何も伝わって来ないが、少なくともカークス様との間に確かな形があったのは感じる。
 だから触れようとしていない、そんな風に思えるのだ。