「先生のおかげですわ」

「ですが、無理はいけませんよ。 メリル様はすぐ我慢なさろうとするから」

「ハンナにも、いつもそれで叱られてしまいます」

 私が小さく笑うと、先生も笑う。

「ハンナさんは私の良い助手になりそうだ」

「あら、私の大事な侍女ですわ」

 と、そこへハンナが嬉しそうに口を出す。

「まぁ。 何をお話かと思えば、私を取り合っていたとは。 これを天にも登る気持ちというのでしょうか」

 ハンナはスコーンの他に、私の作ったアップルパイも持って来てくれた。

「今日、私が焼いたパイですわ」

「ほぉ、メリル様が?」

 先生は楽しそうに一口頬張る。

「うん、パイ生地はサクサクしているのに中の林檎はほんのり甘酸っぱい。 なかなか美味いですな」

「良かったですわ」

 誰かに喜んでもらえる幸せというのは、もしかしたら心も元気にする作用があるのかもしれない。

「あ、そういえばカークス様よりお預かりして来ましたよ」

 診療鞄の中から取り出したそれを、私の手に手を添えて手渡す先生。

「ジョージが元気を失くしていましてね、カークス様があまりに心配なさるから先に診察して来たのですよ」

「ジョージが? 具合はどうですの?」

「元々は年の割に元気な男ですからね。 何も心配いりませんよ」

「それなら良いのですが……」

「ジョージもメリル様に会いたがっていましたよ」

「えぇ、私もジョージには本当に心配掛けてしまって申し訳ないと思っていますの……」

「詳しい事はおそらくカークス様の文に書いてあるでしょうから、そちらで」