「今日も上手くできましたね、メリル様」

「教え方が分かりやすいおかげよ」

 私の最近の楽しみはアップルパイ作り。
 近くの村人が美味しい林檎を作っていて、それをたくさん届けてくれるのだ。
 お礼に焼いたアップルパイを使用人に届けさせると、とても喜んでいたという報告を受けるのが楽しみ。

 誰かが作って、食べて美味しいと言ってもらえて、また作りたくなる、そんな循環に幸せを感じるのは不思議だ。
 それだけではない。
 一人で何かを楽しむという、ほんのちょっとの事が私にとっての大切な時間なのだ。

 例えば刺繍をしたり、本を読んだり、愛犬を撫でたり。
 庭園の手入れは手が掛かるから、私にはなかなかできないし、させてもらえない。
 それでも、その様子をお茶を飲みながらテラスから眺めているのは飽きない。

 ただ、いつもテラスにばかりいたせいで、これからの季節は体調を崩してはいけないと暖炉の前にいる事が増えてきた。