セトと初めて会ったのは、12歳。
夢の配達人になる、少し前の事だった。

幼い頃の保育所での出来事が原因で、俺は学校には行かずに育った。
家族とランやライ達親戚。あとは両親と知り合いの人達としか付き合って来なかった俺には、それ以外で同じ歳の友達はいなかった。
保育所でやり合って以来、きっと俺は心から他人を信じる事が出来なくなってしまっていたんだ。

体裁や建前で笑顔を作っていても、心の奥底ではきっと疑っていた。

漆黒の瞳(天使の能力)で心を覗けば、君達は違う事を思ってるんでしょ?……って。

汚い、嘘吐きの人間が嫌い。
でも、そう思ってしまう自分が……。心の何処かで疑ってしまう自分が、何より嫌いだった。


だから、基本は独りだった。
あの日も、1人きりで、人目や人混みを避けて港街の外れで修行してたんだ。

かと言って、1人で出来る事なんて限られていて……。退屈な時間に、ふと、思ったんだ。

「ミライさん、早く帰って来ないかな〜……」

弟子入りしたものの白金バッジのミライさんはほとんど仕事で、休みは1週間に一度あれば良い方。その他は仕事が済み、また次の仕事に行く合間合間に様子を見に来てくれた僅かな時間に前の課題をチェックされ、新しい課題を渡されるだけだった。

「もう出来るようになっちゃったよ……」

今回与えられた課題である、スケボーを使ったいくつもの技。学校にも行かず、ランやライ以外特に遊び相手もいなかった俺には時間がたくさんあり過ぎて……。ほとんどの時間を修行に使えるから、課題が少ない時は習得(マスター)するのにそんなに時間を費やす事がなかった。

熱中している時は感じないが、暇になると時々妙に寂しくなる……。

けれど、これは自らが選んだ孤独。
決して「寂しい」と口に出す事はしなかった。

「!……やべ、外れそう」

ふと俯くと、眼帯がズレて紐が緩みかけているのに気付く。
いくら今居る場所に滅多に人が来ないと言っても、漆黒の目を晒したまま過ごす勇気がなかった俺は、一度眼帯を外して再び着け直していた。

その時……。

《ーーなにしてるの〜?》

「!っーー……ぅわっ?!」

「わんっ!」と言う鳴き声と同時に声が聞こえて、俺は大きな何かに押し倒された。