蓮葉(レンハ)様を起こさないように、ゆっくりと出入り口の扉へと向かう。
おそらく外には護衛が居て、抜け出すのは至難の業だ。何とか、ツバサとの仲を知っていていつも力になってくれるレベッカの力を借りられないだろうか?、と考えながら、覗き穴から外の様子を伺った。

「!……え?」

すると、私の目に飛び込んできたのは予想外の光景。
外に居るのは、この村の村長さん。そして、数人の見慣れない男達だ。
村人、ではない。言葉は悪いが、その見た目はガラの悪そうな……そう、"ゴロツキ"と呼ばれそうな人達。
しかも、ハッキリと会話は聞こえないが、何処か村長さんとそのゴロツキ達が揉めているようにも見える。

何だか嫌な予感がしたーー。

ゆっくりと扉から離れて、ポケ電でレベッカに連絡を取ろうと思った。
けれど、私が覗き穴から目を逸らそうとした瞬間。ごろつきの一人が村長さんの胸倉を掴み、地面に放り投げて、腰に差していた剣を抜いた。

「!っ……おやめなさいッ!!」

目に飛び込んで来た光景を無視する事なんて出来なかった。
私は咄嗟に鍵を外し扉を開けると、倒れている村長さんに駆け寄り、ゴロツキとの間に入った。

「!っ、レノアーノ様……ッ」

「村長さん!大丈夫ですか?」

倒れている村長さんの肩に手を添え、ゴロツキをキッと睨む。
すると、その中で1番体格の良い、おそらくリーダーらしき男が私に歩み寄って来てニヤリと笑いながら言った。

「へぇ、アンタが女神(レノアーノ)様か。噂通りの上玉だな」

ベロリッと舌舐めずりをしながら見つめられて、ゾクリと悪寒が身体を走る。思わず身を後ろに引くが、ガッと腕を掴まれて引き寄せられてしまった。

「気に入った。この女も連れて行こう」

「!っや……放してッ!」

必死に振り解こうとするがビクともしない。
するとその光景を見て村長さんが叫ぶ。

「おやめ下さいッ!!アメフラシの巫女さえ渡せば、他の者には手を出さない言う約束ではありませんかッ……!!」

!!ーー……っ、え?

信じられない言葉に、驚きを隠せなかった。