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「のう、ツバサ。退屈じゃ、何か話をせい」

蓮華国を出て船に乗り、次の日の朝に隣の大陸へ到着。そこから目的地へ移動中の馬車の中で、正面の席に座っている蓮葉(レンハ)様が言った。
さっきまで窓の外を眺めて居て「いいの〜!外の世界は飽きないの〜」と言っていたのに、ついに飽きたらしい。

まあ、仕方ない、か。
馬車に乗ってもうすぐ二時間程だ。
途中小休憩に立ち寄った街まではそれなりに自然が溢れて景色が豊かだったが、今走っているのはやや荒地。景色に大した変化がない。

しかし、「何か話をせい」。この命令には参った。

「……。何か、と申されましても」

「何じゃ、そなた意外と話し下手か?
せっかく良い見た目なのに損じゃな〜。瞬空(シュンクウ)と良い勝負じゃ。
あやつも見た目は悪くないのに、固い話しか出来ん奴だからの〜。
……ふむ、ならば話題を出してやる。夢の配達人には他にどんな奴がおるのじゃ?」

「あ!それ、ボクも聞きたい!」

蓮葉(レンハ)様の言葉に、俺の隣に座っていたジャナフも手を上げて微笑む。

どんな奴が居るか、かーー。

色々と頭の中に思い浮かべてみるが、夢の配達人の全員を上げていったら正直キリがない。
かと言って、絞って話そうにも誰の事を話したらこの場が盛り上がるのかも分からない。
暫く考えていると、困った俺を見兼ねたジャナフが助け舟を出してくれる。

「ねっ、ツバサと歳が近い夢の配達人っていないの?」

「!……え?」

「だってさ、ほら!ボクが今までツバサと一緒に居て会ってきた人達って、みんな結構歳上の人ばっかりだったじゃん?
友達、みたいな〜……ほら!一緒に競い合って訓練とかした、ライバルみたいな人とかさ!いなかったの?」

ジャナフにそう言われると頭の中にある人物がポンッと浮かび、俺は思わず名前を口に出した。

「……セト」

「!……セト?」

「ああ。今じゃなくて、昔夢の配達人だった頃に同じ歳の同期が1人居たな。
どっちが先に昇格出来るか競ったりしてた」

「ほう、その者の特技はなんじゃ?」

「彼は獣使いでした。
主には大型犬を従わせて……。そう、まるで猟犬や警察犬のように操って狩りをしたり、犯人(ターゲット)を捕まえたりする任務が得意でした」

懐かしい昔の思い出。
セトとは夢の配達人になる少し前に知り合ったけど、向こうが屈託なく接して来てくれたからとても話しやすかった。