「小野山さん、修学旅行中でも料理のこと考えてるんだね」
「はっ、確かに!」
「本当に料理が好きなんだ」
そう聞かれて、私は「うん、好き」とうなずく。
「でもね、遠坂くんが私の料理を食べてくれるようになってから、さらに料理をするのが好きになったの」
「俺が?」
「遠坂くん、いつもすごく美味しそうに食べてくれるから、『これ作ったら遠坂くんはどんな顔してくれるかな』とか考えるのが本当に楽しくて」
「俺そんなに表情豊かだった?ちょっと恥ずかしいなそれ……」
「うん!いつも可愛いなあって思いながら見てた」
私の大好きなその表情を思い出して、つい笑みがこぼれる。
だけど、それは遠坂くんにとっては不本意だったらしい。
「在花」
ちょっと拗ねたような声で名前を呼ばれた。
驚いて顔を上げると──。
遠坂くんはちょっと身をかがめて、私の唇にキスを落とした。
柔らかなその感触は、ほんの一瞬ですぐに離れる。



