隣の不器用王子のご飯係はじめました




「ご、ごめん遠坂くん……私たちがここで会うよう由梨に仕組まれてたっぽい」

「そうなの?」

「うん……。本当にごめん」

「何で小野山さんが謝るの?俺は……」



何かを言いかけた遠坂くんは、ハッとしたように口をつぐむ。

そして、何に気付いたのか慌てた様子で急に私の手を引いた。



「小野山さん、こっち」

「え?」

「静かに」



自動販売機の間に置かれた観葉植物の陰。

そこで遠坂くんは、私を抱き寄せるようにしながら息を殺していた。


突然何事かと戸惑っていると、通路の方から男性二人の話し声が聞こえてきた。



「んー、いないか。確かにうちの男子生徒が上の階に行ってるのを見たと思ったんだが」

「気のせいじゃないっすかー?女子の泊まる階にこっそり行くとかいうのはわかりますけど、一般客が泊まる階にわざわざ行ったりしないっしょ」