隣の不器用王子のご飯係はじめました




拾ってくれたお礼を言いかけた私は、その人の声にピタリと動きを止める。


ばっと顔を上げると、そこには……困惑顔の遠坂くんがいた。



「と、遠坂くん⁉」

「うん。お疲れ様」

「お疲れ様。……えっと、どうしてここに?私は由梨にこの階の自販機で飲み物を買ってこいって言われて来てたんだけど」

「俺は何か……よくわかんないけど、杉野に連れて来られた」

「杉野くんに?」

「そう。あいつはそのまま戻ってったけど」



わざわざ7階の自販機を指定した由梨に、遠坂くんを連れて来た杉野くん。

あの二人は仲が良くて……



「まさか……」



ある可能性に思い当った私は、慌ててスマホを取り出して由梨の『どういうこと?』とメッセージを送る。

返信は数秒後にあった。



『サプライズその2!失恋したてのあいつにも協力してもらったのよ♡』



なっ……何ですと。

さあっと血の気が引く。