隣の不器用王子のご飯係はじめました




今回、そんな中での再会。

通されたリビングは、息の詰まるような沈黙に包まれていた。


ソファーに背筋を伸ばしたまま座った母は、何かに怯えるように肩を震わせうつむいている。

姉さんも毎日うるさいくせに、今だけは一言も発さずにスマホをさわっている。



……どうすりゃ良いんだこの雰囲気。


誰一人として言葉を発しないまま、たっぷり三十分は流れた。

体感的には三十分どころか三時間は経ったような気分だ。


時計を見ると、正午過ぎを指している。



「……ねえ」



俺はゆっくり立ち上がり、とうとう沈黙を破った。



「台所、使っても良い?」



顔を上げた母は、言われている意味がわからないという顔をしていた。



「キッチン。俺に昼飯作らせて」

「え……ええ」



戸惑いながらも一応許可をしてくれた。